障害者福祉事業 新着情報
不確実な時に自閉症の人を支援するということ
2020-04-27
不確実な時に自閉症の人を支援するということ
~カラ・ヒューム氏による論文(ノースカロライナ大学の自閉症研究者)
訳:諏訪利明氏他(川崎医療福祉大学)を読んで
新型コロナウィルス感染の収束が見えない生活の中で、
障害をもつ子どもや人はより強い不安や困惑を示しているのではないでしょうか。
昨日(20日)に社会福祉法人コスモス理事長・墨さんから
堺市自立支援協議会・施設部会に情報提供された朝日新聞デジタルの記事に、
川崎医療福祉大学の諏訪利明氏らによる自閉症の人の家族や支援者に向けた支援策
「不確実な時に自閉症の人を支援するということ」が紹介されていたので、さっそく見てみました。
https://w.kawasaki-m.ac.jp/data/6278/topicsDtl/
ノースカロライナ大学の自閉症研究者のカラ・ヒューム氏による論文の日本語訳です。
わかりやすく翻訳されているのでしょうが、訳文だけに読みとりにくいところが多くありました。
しかし、いまの事態の中では参考にしたい基本的な視点が投げかけられているように思えました。
文中に、以下のように支援の基本をまとめているので、
まずここから全体を理解して、
個々の論点について注目して読めばいいのかなと思います。
◎不確実な時に自閉症の人を支援する7つの戦略
1. 理解についてサポートする 2. 表現の機会を提供する 3. 対処と落ち着くためのスキルを優先する 4. ルーティンを維持する 5. 新しいルーティンを構築する 6. つながりを育む(離れたところから) 7. 行動の変化に注意する |
1.新型コロナウィルスについての知識や、起こっている事態について、
直接的で明快な表現で、
視覚的情報のとり入れや、繰り返しの語り合いなども工夫して、理解を高めること。
2.話し合い、書くこと、制作活動、遊びなどを通して、
本人の感情表現も含めて、表現の機会を多くすること。
3.音楽を聴く、ビデオを見る、椅子に揺られるなど、
本人の落ち着くスキルをだいじにすること。
散歩などの身体活動も不安を和らげるのに効果がある。
4.本人が安心して生活をすすめるためのルーティンが維持されること。
5.見通しがもてて、信頼や共感の中で新しい生活の仕方のルーティンが作られていくこと。
6.自宅に自粛していても、つながりが見えるまたは感じられる配慮
(例えば、家庭訪問・電話・手紙のほか、
オンラインプラットフォームのズームなど対象者に合わせた配慮)がいること。
7.見通しがもてない生活の中で、行動などの変化に気をつけて、
不安やうつの兆候がないか注意する必要がある。
あいまいな読みですが、こんなことが書かれているように思います。
利用児・者について現場から相談や報告があったときに、
現場の担当者と、管理者や主任、サービス管理責任者等が
一緒に考える参考資料になるのではないかと思います。
さらに付け加えれば、上記の論文の基本は、
「支援する人」から「支援される人」への対応であって、
障害をもつ子どもや人(つまり「支援される人」)の主体性をとらえたものとは言い切れないと思います。
事態が見通せない中で、自らの不安や困惑を、
どんな行為や表現で表して抜け出そうとしているのか。
それは、好ましい行為の姿としてではなく、
むしろ“困った”行為として表されることが多いとも考えられます。
支援者が複数の目で見てみると、
そうした行為の中に対象となる子どもや人の“ねがい”が見えてくるのではないでしょうか。
本人自身が、自ら快適さを見つけていけるような支援を、支援者集団で検討してください。
2020年4月21日
コスモス研究所 中村 清隆